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法律事務所のアラートはもうお読みでしょう。ですから本稿はその類ではありません。代わりに3つの問いを。
1. US$100m の信託が、なぜ US$20.2m の納税額になるのか。
2. 2冊目のパスポートがあっても、なぜ中国の非居住者になれるとは限らないのか。
3. 記録が整っていない家族は、実際にどこで払いすぎるのか。
末尾にチェックリストがあります。今から取りかかっても間に合います。
これはあなたに関係があるか? 判断は3つです。財産を信託に入れた時点で委託者が中国の税務上の居住者だったなら、関係あります。受益者の誰かが中国の居住者で、現物給付を含め何かを受け取っているなら、関係あります。関係者の誰かが外国の身分を持ちながら、主たる経済的利益を中国本土に置いたままなら、おそらく関係あります。そして最初に答えを出すべきなのは、この3つ目です。
7月25日の朝、香港のあるファミリーオフィスを思い浮かべてください。
顧客向けアラートは夜のうちに届いていました。漢坤、KPMG、モルガン・ルイス、どこからも。週末までには、ストラクチャーのどこにリスクがあるかは概ね把握できていました。法律上の論点は難題ですが、それはシニアアドバイザーが報酬を得て解決する種類の難題であり、すでに解決に向かっていました。
そこで誰かがひとつ質問し、部屋が静まりました。
2023年3月に入れた香港上場の銘柄、私たちは実際いくらで買ったのでしょうか。
誰も知りませんでした。カストディアンは2度替わり、2024年のどこかで証券会社間の移管もありました。答えは理屈のうえでは存在します。2つの銀行と誰かの受信箱の中に、3種類の異なるステートメント形式で。
この90日を難しくしているのは、法律上の問いではなく、この問いです。
1. 課税は信託の一生を追いかけるようになった
2026年7月24日、財政部と国家税務総局は第21号公告を公表し、同日施行されました。海外信託に中国でどう課税するかを正面から定めた、初めての規則です。従来は、資金が出てくるまで課税は待てるという前提でした。いまは信託の一生における各場面——拠出、保有、分配、終了——がそれぞれ独立した申告と計算の対象となり、税率は一律20%です。

見落とされがちな規定があります。信託の内部で生じた所得は委託者に帰属し、誰の手にも1セントも渡っていなくても、毎年課税されます。
さらに、2023年1月1日まで遡って過去を整理するための90日間の期間があります。公告の文言は「本公告の施行日から90日以内」であり、その期間内は延滞金が免除されます。この期間の外を当局が調べることを制限する規定は公告のどこにもないため、金額が大きい場合に2023年を確定的な下限とみなすのは賢明ではありません。
終了日は実際には明記されていません。7月24日を1日目と数えれば10月21日、翌日から起算すれば10月22日になります。どちらの読み方も流通しています。社内では10月21日を前提に進め、顧問に確認してください。
2. 最初の関門:あなたは非居住者ではないかもしれない
最初の反応はたいてい、外国の身分があるのだから自分には関係ない、というものです。
関係あることが少なくありません。
公告は明確です。外国籍を取得した、あるいは国外に長期居留・永住権を有していても、主たる経済的利益が中国本土にとどまっている人は、中国に住所を有するとみなされ、したがって居住者として扱われ得ます。183日基準と住所基準はいずれも維持されます。新しいのは、住所ありと判定されるもう一本の道筋が加わったことです。パスポート、さらには抹消済みの戸籍でさえ、この論点を決着させません。
最も強く効いてくるのは、香港と台湾の事業オーナー、そしてレッドチップの創業者です。身分は国外にあっても、資産、収入、家族、支配権は本土に据えられたまま。他国でも税務上の居住者に該当する場合は、関連する租税条約のタイブレーカー規定が次の論点になります。そして多くの場合、そちらのほうが望みがあります。
どちらに転ぶかは弁護士の領分です。ただ、どちらの方向で主張するにせよ、必要な材料は同じです。源泉まで遡ることができ、突き合わせにも耐える、資産とキャッシュフローの完全な記録です。経済的な重心がどこにあるかは、主張するものではなく、立証するものです。そして答えが「居住者」で返ってきた場合、納税額はおおよそ次のようになります。
3. ひとつの信託、5つの場面、US$20.2m

米ドル表示にしているのは、多くの家族が自らのバランスシートをそう捉えているからです。申告自体は人民元で行い、適用為替レートで換算します。これ自体がひとつの作業であり、後述のチェックリストの項目でもあります。またこの例では、信託内で生じた所得は留保されず分配されたものと想定しているため、取得価額には加算されません。
拠出は単独で最も重い場面であり、しかも何ひとつ売却しておらず、現金も一切入っていない時点で納期限が来ます。さらに5年分割納付の特例の対象外です。この特例は終了時、および居住者が非居住者となる場合には使えますが、拠出には使えません。手元資金を先に用意する必要があり、多くの家族にとってこれ自体が経営レベルの判断になります。
信託内部の所得は2つの区分に分けて課税され、両者を相殺することはできません。受託者報酬、管理報酬、弁護士費用、アドバイザリー費用はいずれも控除できません。分配が二重に課税されることはありません。ただし、その所得が途中ですでに課税済みであることを示せる場合に限ります。
身分の変更は別の場面です。

非居住者になること、そして信託を終了することは、いずれも実現していない利益に対してみなし清算を生じさせます。死亡の場合は誰が相続するかによります。清算が生じるのは非居住者が相続する場合、または相続人がいない場合に限られます。これを準相続税と呼ぶ人もいます。おおむね的を射た言い方ですが、中国は相続税を導入しておらず、仕組みも清算であって遺産への課税ではありません。
4. これらの数字はすべて、あなたの帳簿から出てくる
それぞれの数字が何に依拠しているかを見てください。取得価額の立証、各年度の所得の区分ごとの内訳、課税済みであることの証明、途切れのない取得価額の記録。居住者かどうかという論点でさえ、最後は完全な元帳に行き着きます。
どの規定が適用されるかを教えてくれるのは法律意見書です。申告書に載る数字が出てくるのは、あなたの帳簿からです。
シニアアドバイザーであれば、ストラクチャーについて根拠のある見解を2週間でまとめられます。一方、6つのプライベートバンク、4つの通貨、2度のカストディアン移管、そして連なる下位会社にまたがる5年分のポジションとキャッシュフローを再構築するには4か月かかります。しかもこれは、請求する側も支払う側も気の進まない作業です。
ボトルネックは法律意見書ではありません。帳簿です。
5. 帳簿の不備が払いすぎを生む4つの経路
これは脱税の話ではありません。払いすぎの話です。記録が薄いと、数字は下がるのではなく上がります。法律は、多くの家族が実際に立証できる範囲よりも寛容です。
以下の数字はいずれも例示的な想定事例です。
ケース 01 —— 6つの口座、1人の納税者、そして消えた損失
陳氏は中国の税務上の居住者です。彼の信託は、2つのプライベートバンク、1つの証券口座、そして独自のカストディアン関係を持つ BVI 保有会社を通じて上場株式を保有しています。ある年、米国のテクノロジー銘柄は値上がりし、香港の銘柄は値下がりしました。ストラクチャー全体で見れば、その年はわずかな純益でした。
課税所得は納税者ごと、年度ごとに計算され、同一年度・同一区分の利益と損失は相殺されるはずです。ところが申告は口座ごとに組み立てられるのが通例です。データがそういう形で届くからです。3種類の互換性のない形式で、4組のステートメントとして。損失が利益と出会うことはありません。家族は総額の利益を申告し、その損失は翌年に繰り延べられることもありません。消えてしまいます。損失の繰越もできないからです。

課税ベースを下げるのは、一元化することです。 法律上の主張は要りません。1つの年度、1つの区分、1人の納税者を、すべてを横断してひとつの画面で見られるようにするだけです。
タイミング上の注意点がひとつ。 この相殺が効くのは2026年以降だけです。90日の期間内に申告する過去の所得には効きません。2026年1月1日より前に生じたものは、区分を分けずに「利子・配当・賞与所得」としてまとめて申告することになります。
ケース 02 —— 誰も分配と呼ばなかった学費
2つ目の家族です。両親はシンガポールの身分を持ち、信託を設定しました。娘は中国の税務上の居住者で、米国に留学しています。信託は非居住者によって拠出されたため、課税事由は分配であり、納税義務者は娘です。
毎年3つのことが起きますが、そのどれも分配には見えません。信託は学費を大学へ直接支払います。彼女は下位会社が保有する住居に賃料なしで住んでいます。2024年に貸付が実行され、返済されないままです。この3つはいずれもみなし分配に該当します。

この例では、彼女が他国の納税者でもないことを前提としています。仮に米国人であるなど他国の納税者でもある場合には、別のルールが上乗せされ、分析は変わります。
この家族は何も隠していません。これらが該当することを知らなかったのであり、ほとんど誰も知りませんでした。しかし証拠がどこにあるかを見てください。受託者の支払指図、下位会社の銀行取引、2024年以降誰も見ていない貸付残高。これらの記録のどこにも「分配」とは書かれていません。 見つける方法は、信託とその配下すべてを資金の動きというひとつの視点に載せ、各取引について「最終的に誰が得をしたのか」と問うことです。
ケース 03 —— 納付済みなのに、証明できない
性質上、個人所得税に当たる外国税額は控除できます。多くのポートフォリオにはそれが数多く含まれています。ただし控除額には国ごと・区分ごとの上限があり、納付の証憑があるかどうかで決まります。その証憑は、合算するために作られたわけではない何十通もの月次ステートメントの中に散らばっています。集計がなければ、控除は減額されるのではありません。放棄されるのです。
税はすでに納めてあります。足りないのは、それを証明する記録だけです。
ケース 04 —— 控除の価値は、立証できる範囲まで
部屋を静まらせた、あの質問に戻ります。

法律は、時価から取得価額と合理的な費用を差し引いた部分に課税します。これはあなたに有利な仕組みです。総額ではなく利益に課税されるからです。しかし取得価額を立証できなければ、その数字はあなたが決められるものではなくなります。当局は評価を政府の価格認証機関に委ねることができます。
取得価額を立証できなければ総額に課税される、と公告が述べているわけではありません。上限の数字は最悪の場合の境界であり、幅を示すために置いています。
6. 完全な帳簿が実際にもたらすもの
完全な帳簿が最初にもたらすのは、申告書ではありません。全体像です。
いま、自分のストラクチャーについて把握していることは、ほぼ確実に断片的です。ある銀行のポジションは分かっていても、別の銀行は担当者に尋ねることになります。下位会社のキャッシュフローは会計士のもとにあります。2023年のあの移管は、誰かの受信箱にあるかもしれません。これは管理が悪いという話ではありません。銀行、法人、年度にまたがって散らばった資産に、統合された全体像が存在したことは一度もないのです。そのために作られたものが何もなかったからです。
すべてを1枚にまとめると、3つのことが変わります。
- 自分が向き合っている規模がどの程度か分かります。それによって、この件を最優先にすべきか、後回しでよいかが決まります。 そして正直なところ、その答えは家族ごとに大きく異なります。
- 顧問との会話が「記録を探してください」から「判断してください」に変わります。前者は時間単位で請求されます。後者こそ、あなたが報酬を払って求めているものです。
- 構築は一度で済みます。以後は維持であって、毎年10月に組み立て直す作業ではありません。
この件を掌握しているとは、リスクがないという意味ではありません。自分がどこに立っているかを分かっている、という意味です。
まとめておくべきものは次のとおりです。申告のためではなく、顧問に渡すためのものです。
- ストラクチャー内のすべての法人を1枚の図に。休眠中の中間持株会社も含めて
- 2023年1月1日以降のポジション単位の履歴。取得価額を付し、すべてのカストディアンを網羅して
- 信託レベルと下位法人レベルのキャッシュフロー。受益者の口座だけでは足りません
- 源泉徴収税と納付済み外国税額を、国別・区分別に整理し、証憑を添えて
- 年度ごとの損益を2つの法定区分に分け、使用した為替レートと換算日を明記して。どの通貨で報告していても、税額は人民元で計算されます
- 非上場のものの評価額。プライベートエクイティ、ファンド、不動産、事業会社
- 受益者に関わる貸付、保証、費用の負担、資産の使用のすべて
- 信託証書があなたと顧問への開示を認めていること、および受託者が協力する意向であることの確認。認めていない証書もあり、先に補償を求める受託者もいます
- 税務上の居住地に関するあなたの立場を裏づける、資産・所得・居住の証拠
第15号公告は、信託を設定した年度と2025年度の年次報告書、および過年度の財務諸表も求めています。どこまで遡る必要があるかは、税務顧問に確認すべき事項です。
7. 自分からではなく、カストディアンから始める
10月に間に合うかどうかを左右する、実務上の要点がひとつあります。最も長い工程はあなたのチームではありません。銀行です。 過去のステートメントは、依頼してから届くまで通常4〜8週間かかり、エスカレーションなしでは数年分より前に遡らないカストディアンもあります。
つまり依頼は今週出す必要があります。社内の整理が終わるのを待つ前に、です。ほかのことはすべて並行して進められます。これだけは進められません。
そしてこれは繰り返されます。年次での帰属により、信託は恒常的な年次申告の対象になります。前年度分を3月1日から6月30日の間に、毎回同じ証拠で。顧問がこの秋に行うことは、その第1回目であって、一度きりの駆け込み作業ではありません。
その4か月を短縮できるかどうか。そこが私たちの担当領域です。

中央の2つの数字は、立ち止まって見る価値があります。毎月15,000件のPDFステートメントを解析し、10,000件の取引を標準化・照合しています。 家族の過去データは、まさにこの2つの形で存在しています。
税務顧問が作業できる元帳に変えるには、3つの工程があります。すべての銀行とすべての下位法人から、データ連携でもPDFでも、ポジションと資金の動きを収集する。同じ資産でも機関ごとに呼び名が違うため、ひとつの形式に標準化する。そして各明細をカストディアン自身の記録に照合し、合わないものは数字を埋めるのではなく印を付ける。
最後の工程は完全な自動化ではありませんし、そう装うつもりもありません。 解析と突き合わせは AI が行い、例外の確認は人が行います。問われたときに耐える必要があるものについて、この工程は省けません。オルタナティブファンドや仕組商品も対象に含まれます。
Canopy は、外部資産運用会社、ファミリーオフィス、超富裕層のためにカストディアンを横断してデータを統合する AI ネイティブの資産管理プラットフォームです。世界250社超のカストディアン、うち100件超の直接データ連携、US$120bn を超えるレポート対象資産、そして原資料まで遡れるドリルダウンを備えています。私たちは法律事務所、税務事務所、受託者と並んで働きます。私たちはデータ基盤を作り、判断は彼らが行います。
Coco Lai は J.P. モルガンのプライベートバンキング部門で4年間勤務し、CFA 資格を保有しています。現在は Canopy の香港における事業開発を統括し、資産管理の華やかでないもう半分——データ、レポーティング、そして何か問題が起きるまで誰も気に留めない実務基盤——について執筆しています。
Coco は Canopy の従業員です。文中の見解は本人のものです。
本稿は一般的な情報提供のみを目的としています。税務または法務に関する助言ではなく、Canopy は税務意見を提供しません。海外信託の課税は個別の事実関係に大きく左右されます。ご自身の状況については、資格を有する税務顧問または弁護士にご相談ください。
出典
公式
- 財政部/国家税務総局 2026年第21号公告、海外信託に係る個人所得税事項について(2026年7月24日)
- 国家税務総局 2026年第15号公告、海外信託の税務管理について、および公式解説
- 財政部税政司および国家税務総局所得税司——記者質疑応答
- 新華社——両部門が海外信託の個人所得税の取扱いを明確化
専門家による解説
- 漢坤——海外信託の個人所得税新規則:90日間の期間が重要
- 金杜(King & Wood Mallesons)——海外信託の個人所得税新規則
- 君合(JunHe)——海外信託の個人所得税新規則の要点
- 錦天城(AllBright)——3つの関門、6組の規則、4種類の納税者
- PwC『中国税務新知』——海外信託の個人所得税規則の解説
- KPMG China Tax Alert——海外信託の個人所得税新規則
- モルガン・ルイス——中国が海外信託に関する個人所得税の新規則を制定



